Oct 28/2003 [スタンスペーパー(中間報告書)] 福島県いわき市でのMRI爆発事故 v1.3
日、東芝メディカルよりスタンスペーパーという中間報告書が報道関係者向けに発表されました。これを入手することができました。また東芝メディカルの広報部とも連絡が取れ、解説についてホームページ掲載可能であることを確認しましたのでその概要についてここにお知らせしたいと思います。

 なおスタンスペーパーについては、明日以降に東芝メディカルのホームページで掲載されるものをご覧いただくといいと思います。本件の原因究明、およびその報告に関しては、かなり努力をしているようですので、ユーザーとしては一安心といったところです。ただしこのスタンスペーパーは会社側の中間報告ですから、今後調査が終了した段階では変更がありうるものだと思われます。


推定されている事故原因は下に示すようなものですが、一番重要な点は、この状況は機器入替のときに行った手順の特殊性に由来するものらしいという点です。ですから、患者さんをスキャンしているときにはこのような操作を行うことはありえません。

したがってこのページをご覧になっている医療関係者と患者さんは安心して検査を行い、また受けて大丈夫だと思われます。この事故が起こってから、検査現場では不安を訴える患者さんが多くいらっしゃることをさまざまなところから聞いていますが、どうぞ安心して受けてもらってください。

関連事項(前回記事)

■発表された事故原因の概要

スタンスペーパーのうち重要な部分を抜粋しますと、

(1) 事故前日に通常は取外す事のない破裂板が取り除かれたため、大気(空気)がヘリウム容器内部に吸引されて氷結を起こし、このことがヘリウムガスの排出経路を閉塞し、

(2) 事故当日、その状態で真空バルブを開放した、
この結果、液体ヘリウムが急激に気化、ヘリウム容器の内圧が上昇し、容器そのものが爆発に至った、と推測されます。

とのことです。
図が添付されていますので、その一部を掲載します(図はそのまま引用していますが、解説はあくまでも私がつけているものですから、誤りが含まれている可能性があることをあらかじめお断りします)。

■安全システム

ごらんのように液体ヘリウム層からの圧力の逃げ口は3箇所あります(緑のマーク)。このうち一番小さい「逆止弁」というのは、通常使用においてかならず気化してしまうヘリウムを外に逃がすものです。14kPa(キロパスカル)というのは作動する圧力です(100kPaはだいたい1平方センチに1Kgの圧力がかかっている状態です)。

もし仮に液体ヘリウムが突沸し、圧力が50kPaを超えるとまず安全弁が作動して外に圧力が逃げます(これは可逆的であり、圧が低くなればまた弁は閉じる)。もしそれでもだめで圧が100kPaを超えると破裂板が破れて圧を逃がすわけです。

このように少なくとも2重の(つまり安全弁と破裂板)システムで守られていますから、もしかりにクエンチによって液体ヘリウムが急激に気化しても大丈夫です。

■事故はなぜ起こったのか

それではなぜ事故がおきたかというと、上記の2つのことがらが重なったためであると考えられます。

すなわち、まず第一に、事故前日に消磁をした際に、破裂板を取り除いたことです(その理由は現在のところはっきりとはしていません)。液体ヘリウムは持続的に気化しますから、中から外へ向かう気流が生じます。しかしその流れは穏やかであるので、対流現象により外部の空気が逆流してヘリウム層内に入ってくることが考えられます。空気の成分である窒素や水は、液体ヘリウムの温度で固体になります。つまり「空気が凍る」といった非日常的なことが起こるわけです。このため排気管のどこかに凝結を生じた可能性が考えられます。図のような場所に凝結を起こし、管が狭くなっていれば、急激なヘリウム気化の際に圧の逃げ場がなかったと考えられます。管の直径が1/2だとすれば面積は1/4になるわけですから、非常に大きな負荷がかかったことは容易に想像出来ます。

次に、その状態で真空バルブを開放しました。真空バルブを開放すれば、外から急速に常温の空気が真空層に入ってきます。真空であれば「魔法瓶」構造が保たれているわけですからヘリウムは急激に気化しませんが、空気が入って「真空が破れる」状態になれば液体ヘリウムは300度近くも温度が高い空気によって急激に暖められ、突沸を起こすわけです。ところが出口は狭窄を起こしていたので爆発したという機序が考えられます。もし狭窄がおきていなかったら爆発しなかったかどうかについては定かではありません。しかし爆発には至らないと考えている人が多いようです(私が複数の人から聞いた個人的な印象です)。容器の耐圧能力は1600kPa程度あるようですが、この耐圧能力で耐えられるのかどうかは実験をしてみないとわからないことかもしれません。なお、真空バルブを開放するという作業自体に危険性がないのかどうかは今後十分検討されるべき課題であると思われます。これについては今後の調査によって明らかになることでしょう。


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