Feb 10/2003 造影剤のパッケージング考
しくでたエーザイのGd-キレート造影剤プロハンス、杏林大学にも入ったのですが、いまいちパッケージが不評です。これについて考察しました。

ポイントは、
・容量の記載の仕方
・カラーコードの仕方
です。

あわせてシェーリングのマグネビストについても考察しました。


これが新しいエーザイのGd造影剤です。13mLと17mLがあります。

13と17という数字の意味の持たせ方、奇しくも(あるい は敢えてそのようにした)素数であることなどは前回レポートし、大変良い提案であると思いました。

しかし、実際に手元に来てみると、包装に問題アリ、です。なぜかというと、一目で容量がわからないからです。カタログではこのことに気づきませんでした。

それに、そういう観点で見ると、デザインはかなりごちゃごちゃしています。

実際にカートの上に並べられている様子(右側手前のグループ)ですが、どっちが13mLでどっちが17mLかは遠目ではわかりません。なれれば青で塗ったヤツが17mLってわかるかもしれないけど、これはイカン。
そこで、このように容量をマジックで記載しました。大きく「17」「13」と書いたので、これなら分かりますね。黒と赤は、色弱の人には区別がしにくい色ですが、たまたまマジックがその色しかなかったので、この組み合わせで使ってみました。
な〜んて書いたまま忙しくてこの原稿を放っておいたら、エーザイの紙山さん再び出現。タイミングいいなぁ。嗅覚が鋭いのかな。彼は13mLと17mLと印刷したシールを持ってきて、貼ってくれました。
まあこれならわかりますね。

と、いうことで、お金がかかるかもしれないけど、このパッケージはなるべく早くなおしませう。まあこれで医療事故が起こる危険はきわめて低いとは思いますが、選ぶときに分かりにくいので、ぜひよろしくお願いしたいです。

そこへいくと、シェーリングの製品(20mLと15mL)はわかりやすい!

と、思ったのですが...

赤と緑でカラーコードされたこの色の組み合わせはたしか色盲*の人には見にくいはずです。

*「色盲」という用語の使用は、このサイトのポリシーに従っています。

これをシミュレーションをしてみると、下のようになります。右側はもっとも数の多い(概ね75%) 第2色盲での見え方です。この結果は想像以上ではないでしょうか。これでは区別がつきませんね。シミュレート前は、数字も大きく書いてあるからいいやと思いましたが、色が同じになってみると、あれれ実際には小さかったんですね。色によって印象が引きずられていたなぁ。(なおシェーリングの造影剤は10mLのものもあり、これはたしか黄色だったので、色の区別では大丈夫だと思います)

なおこのようなシミュレーションは、いま簡単にWeb上でチェックできるサイトがあるんです。このやり方はちょっと分かりにくいと思うので、説明ページを作りました。

色覚バリアフリープレゼンテーションでは、物の区別は色(カラーコード)だけではなく、図形や文字でも表記すべき、となっています。

そこでこんな風にするのはどうでしょうか。3本は20mL、2本は15mL、1本は10mLという風に棒を書いておくというアイデアです。もちろん別の図形でも良いでしょう。また反対側(封を開ける側)には数字も入っていますが、ここにもできれば棒を入れたほうがいいですね。

(交通信号の例でも分かりますが、3つまでの丸や棒は一瞬で数と位置が分かりますので、認識という点では優れていると思います)

そのほか、色も、緑をやめて青にしたらもっといいですね。これなら下のシミュレーションでも分かるように一目瞭然です。
こではエーザイとシェーリングの製品について考察をしましたが、他の製品についても同じようなことがあるかもしれません。「峻別の容易さ」を最大限にすることによりシステム側の事故防止機能(フェイルセーフ機能)があがることを期待します。

また、使用すべき色の問題に関して言うと、「色覚バリアフリー」の考え方は、テレビや「Science」誌でも紹介され、急速に普及しつつあります。また、日本男性の5%、白人男性では8%に色覚異常があり、全世界ではAB型の血液型の頻度に匹敵する割合のpopulationがいるという主張は説得力のあるものです。いままでは色覚異常のない人にはどのように見えるのか想像することは容易ではありませんでしたが、これらをシミュレーションするweb site [その使い方]もあります。これらは最近普及してきた(理解が進んできた)事柄なのでマグネビストが対応していないのはあたりまえですが、これからは、企業でデザインをする人にはぜひ知っておいて欲しいことですね。

それから一番大切なことを一つ。商品開発はどうしても秘密保持の観点から企業内の意見(だけ)で開発が進んでいきます。しかし工場の人や、企業開発部の人だけが想像したのではニーズに合致しないものを設定しがちです。ひとたび不適切な設定で開発が始まってしまうと、それを修正するのには多大な費用と時間がかかります。それは、企業のコストが増え競争力と収益性が低下するという意味だけでなく、後に修正意見を述べる協力者にもコストがかかり社会的な創造性が低下することを意味します。これはわれわれにとっては馬鹿になりません。最初に聞いてくれれば1時間で済むことが、数十時間かかることもあります。直接のエンドポイント*はあくまでユーザビリティ**(我々ユーザーがどの程度容易に、迅速に仕事に使うことができるか)であることを忘れずに、開発時にぜひ意見を聞いてください。リサーチを十分にやってから開発を進めると、ニーズにあったものを早く作ることができ、修正のコストも最小になります。なおリサーチのやりかたや企業秘密との兼ね合いなどについてはいろいろな事情があるでしょうから、信頼できる相談者を作ることは必要だと思います。(ひゃ〜今日は辛口だったなー)

* 最終的なエンドポイントは、もちろん患者さんに有益かどうかです。企業にとっては収益性もですね。
** そのほか開発時には、使いやすさ研究所の用語解説を是非見てください。はっとすることが書かれています。

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