Feb 17/2002 岩手医大・循環器医療センター
手医大放射線医学講座の玉川芳春教授と佐々木真理(まこと)講師にお招きを頂きまして,講演をさせていただきました.講演はお陰様で無事に終わりまして,そのあと岩手医大および岩手県の放射線科医の先生方と懇親会に出席しておりましたところ,循環器の画像診断で有名な吉岡邦浩先生のポケベルが鳴りました. 
 解離性大動脈瘤を発症した患者さんを乗せた救急車が岩手医大循環器医療センターに向かっているというのです.
 さきほどまでにこやかだった吉岡邦浩講師の顔に緊張の色が走ります.私も画像診断医の端くれですので,よい勉強の機会と思い,一緒に実際の現場の様子を見せていただきました.

 このセンターは,東北地方の循環器の中心的な役割を担っており,年間に解離性大動脈瘤の症例が120例もある病院です.急性期の画像診断における吉岡先生の役割を拝見し,とてもためになりましたのでご紹介します.

循環器病センターの夜間救急入口です.

ERそのものです.

私も白衣を借り,まず救急室でディスカッションが行われる様子を聞きました.患者さんは危険な状態です.

もう一度詳しくCTを撮影することになり,我々はCT室に移動しました.

循環器医療センターのCTは,0.1秒スキャンを誇るイマトロンです.

入口には「超高速CT」の名前が記されています.

患者さんがCT室に搬送されてくる10分の間,忙しく準備が続きますが,吉岡先生にちょっとにっこりしてもらいました(^^)

操作してくれる技師さんは,吉岡先生がとくに信頼を寄せる平田洋介さんです.吉岡先生と平田さんの哲学はすごいですよ.

「通常の予約検査は『練習』,急患こそが『本番』」

うぬぅ,おぬしできるな.という感じです.言われてみればその通り.急患の,時間圧が極めて高いときに遅滞なく検査を施行し,かつ診断ができなければ役に立ちません.

時間圧(Time Presssue) → 使いやすさ研究所

イマトロンのファントムです.

ファントムというのは,患者さんを撮影する前に,準備のために撮る丸っこいもので,これの写り具合で正常の画像が撮影できているかを確認するものです.

いたって真面目なものなのですが,イマトロンのファントムには中にこのような仕掛けがしてあるんですねー(^_^)

直接カンケイないけど,

隣にあるMRI室にも私は興味があるので覗いてみました.

あら? 「MRIの諸注意」の看板の上に置いてくれているのは,おお,拙著MRI準備体操の一部ではありませんか!

これはもう純粋に嬉しかったです.

この絵を描いてくれたのは,横浜栄共済病院の斉藤要恵(かなえ)さんという看護婦さんです.斉藤さ〜ん,あなたの作品ここにも飾ってありましたよー/^.^/


者さんは岩手県ではなく,隣接する県に住んでいる方ですが,重症のため救急車で2時間半もかけて,高度医療施設のある岩手医大附属循環器医療センターに搬送されてきました.病院到着は2月16日午後9時すぎで,いままでに他院で2度のCT撮影が行われています.
DeBakey IIIb型の解離なのですが,非典型例で,2回のCT撮影(19時間)の間に急速に増大しています.切迫破裂*(impending rupture)の状態にあり,極めて危険と考えられます.すぐにイマトロンで解離の状態を細かく把握することになりました.
*切迫破裂(せっぱくはれつ)

普通の日本語のルールだったら,「破裂切迫」という順序で呼ばれるところだと思いますが,医学用語では切迫を先頭につけて呼びます.同様な使い方に「切迫流産」などがあります.
切迫破裂は,放っておくと破裂してしまう可能性が高いことを意味します.大動脈瘤が破裂してしまうと,救命できる確率は非常に低くなるので,なるべく早く診断して治療に移る必要があります.
すでに操作室には,循環器外科医,循環器内科医,麻酔科医,放射線科医,診療放射線技師が揃い,準備万端です.

右側にいるのは,佐々木真理先生で,やはり会場から一緒に来てくださいました.佐々木先生のご専門は神経放射線で,脳梗塞のときなどには中心になって仕事をされます.

(左)患者さんがERから搬送されてきました.患者さんに衝撃を与えないよう,そっとイマトロンの台の上に運びます.

(右)イマトロンの裏側は普通のCTと違って,電子線がやってくる通り道があります.その裏側で写真をとったところです.

撮影するとすぐに吉岡先生の読影が始まります.


一緒にいるのは当直の循環器外科の先生.
吉岡先生から,

「さらに増大しているから,やっぱりopeだ.すぐに執刀責任者に電話してopeの準備を前提に来てもらって!」
「Entryの箇所はここ」
「右腎動脈は偽腔からでてるけど,穴は開いているから真腔吻合でいいだろう」「Celiacはtrue」
「右外腸骨は真腔だから右側から送血管を入れることになるね」

などと,あっという間に次々と指示が飛びます.

 臨床科から信頼されている一流の放射線科医というのはこういうもので,手術に直接役立つことまで的確にアドバイスできる能力を有します.見ていて大変気持ちの良いものでした.放射線科医は直接手術や患者さんへの説明はしませんが,重要なdecisionを迅速に,また高い信頼度で行うために活躍しています.

執刀医がかけつけました.

最終的に打ち合わせをして手術が開始されることになりました.

端からみましても吉岡先生は絶大な信頼を得ており,執刀医の先生は,すでに手術する気持ちでシャウカステンの前に来られ,手術する場合のチェックポイントだけ確認していくという感じです.ここでは,正中切開法を選択する方がいいだろうとか,送血管は右側でたしかにいいだろうとかの,きわめて高度な判断が行われました.

あとは患者さんと,患者さんの家族に手術内容とリスクの説明が行われ,同意が得られれば即座に手術が始まります.


いった感じで,大活躍の吉岡先生のお仕事の様子を拝見させていただきました.小生も小腸閉塞のときには外科のスタッフと緊迫したやりとりをしますが,吉岡先生はよりしっかりとした信頼関係があるようで尊敬しました.

吉岡先生はこの後外科医の先生と手術に入られ,画像診断と実際の手術との対比を行っておられました.

右側は,読影端末のスクリーンセイバーです.このお仕事のしかただったら,そうなっちゃいますよね〜.


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