Nov 28/2007 Philips CT
PhillipsのCTはEssence technologyと呼ばれる、いくつかのキーテクノロジーを集約した新しいCTを発表しました。

今回発表されたのは、トップエンドのiCT と、もう一つがいままでのBrilliance 64です。いずれも、Essence technologyを搭載可能と言うことです(注:iCTに関しては米国では販売開始になりましたが日本での発売は来年とのこと)
これがiCTの外観です。iCTは128列、256スライスのCT装置です。
Essence technologyは、X線管球、検出器、再構成のいずれにおいても革新的な技術を採用し、その集大成としてのCTの総合能力を高くしている、ということです。
まず管球からいきます。
この管球には(1) Spiral Groove Bearing、(2) Segmented Anode、(3) Smart Focal Spotの3つの新しい技術が採用されています。

(1)(2)に関しては、車好きの人にはなんだか親しみやすい技術だなーと思いました。以下説明します。

これが最初のSpiral Groove Bearingの技術。一番上の写真がいままでのベアリング軸受けです。

真ん中が今回のSpiral Groove Bearing。これはタイヤで言ったらブリジストンのポテンザシリーズ(RE71M って言ったらトシがばれるというやつですね。いまだとRE010)みたいなユニディレクショナルパターンみたいな薄い溝が刻まれていて、液体金属を表面に満たし、ハイドロプレーニング現象のような状態で滑らせるもののようです。これによって業界最速の回線速度(0.27sec/rot)でもぶれにくい構造にしているということです。両極支持構造も有しています。

接地面積がボールベアリングに比べてとても長いので、軸がぶれにくく、安定した回転が得られるということだそうです。

フィリップスの話では焦点サイズ(0.5mmx0.5mm)が小さいだけでなく、このような軸安定化構造を採用した総合的なスペックによって本当に高分解能の画像を得られるのだということでした。

次はSegmented Anode。これはAnodeにみぞが切ってあるんですね。なぜこのようなことをするかというと、焦点サイズが小さくなったということは、極細のビームがあたるAnodeにおいて非常に高温が発生するという結果をもたらすわけですから、Anodeは熱膨張をします。この結果でてくるX線の方向は変化しますので、結局はボケを生じる原因となります。

そこでこのように溝を切るわけです。なんか、車のディスクブレーキに溝を掘ること(スリットディスクローター)みたいでしょ。ちなみに僕の車はドリルドディスクローターです。

これがすこし寄って撮った写真。

そしてこれが近接写真です。このように溝が切ってあると、膨張したときディスクは放射状方向ではなくて、回転方向に膨張する余地があります。このため直径の増加が防げますから、大切な端っこの切り欠きぶぶんの変形が少なくなりX線発生方向が変化しにくくなるわけですね。

しかしこの溝が切ってあると、ときどきビームがすりぬけちゃうのでは?と心配になりますけれど、この溝は厚み方向に対してすこし斜めに切れているので、ビーム入射方向から見ると向こうが見えないようになっています。また、X線が不連続になるのではと思いますが、回転角速度が音速を超えているので(?)問題ない、ということでした。このへんは私レベルではよくわかりませんデス。

軸の部分は普通は稠密になっているのですが、中に孔か開いていてここにオイルが入ることにより冷却効率を上げているということでした。
次はSmart Focal Spotで、これはいわゆるシーメンスのFlying Focal Spotと同じようなもので、電子ビームを電磁的に曲げることによりアノードに当たる位置を変え、128列検出器で256列収拾を可能にするものです。

このシステムは、iCTではx-yだけではなくz方向にも振ることで、実効的な分解能を上げられるということでした。

ふぅ〜長かったですね。では次はDetectorです。
以前からTACHとよばれるアッセンブリでしたが、今回は、TACH2という名前になっており、検出器のノイズ低減と小型化がなされています。
同様の説明が入っていますが、scalable(ひとつひとつの部品を集めることによってサイズを変えられる)であること、低線量で高分解能(24lp/mm)の画像が得られるなどが書いてあります。
これが今回のiCTに搭載されている検出器モジュール。ひとつが16列ぶんに相当するので、それが8個並んでいるので128列。Smart Focal Spotで256スライス撮影が可能です。横方向から眺めると、放射状にコリメータが並べられているのがわかります。また下のアップでは、コリメータが縦横に格子状になっている(散乱線防止効果が高い)ことがわかります。またコリメータの長さが非常に長いのも見てくださいね、ということでした。
次は最後のReconstructionです。
これはIntel Quad Coreを搭載してかなり高速に再構成ができるということでした。
最後が開口部の写真です。自分の名刺を載せました。
で、このような高精細な画像は、小さい焦点、変形が少なく安定した回転をするAnode、長いコリメータなどによって総合的にもたらされるのである、ということだそうです。
ちょっと露出オーバーになってしまいましたが、8cmの帯でヘリカルをすることになるので、広くなった帯の撮影開始と撮影終了部分に余分な被曝が生じますから、これを防止するためにEclipse DoseRight Collimatorと呼ばれるシャッター状の構造が付加されており、撮影範囲のみにX線が当たるようになっています。

(Eclipseっていうのは天文用語で、掩蔽(えんぺい)のことです。平たく言うと、日蝕とか月蝕の蝕(食)のことです。皆既日食はTotal Solar Eclipseと言います。もうすぐ、ずっと楽しみにしている2009年7月22日の上海 - 日本南方海上の皆既日食が起こるので、近くなったら詳報しますね。)

というわけで、フィリップスでは検出器の列数だけじゃなくって、バランスの良い総合的なソリューションを見てくださいねということでした。なおBrilliance 64に関しては現在日本で売られていますが、RSNA後の出荷のものにはこのEssence technology搭載になっているそうですので、すぐにこの技術の恩恵にあずかれるようです。