Dec 30/2006 Siemens CT (Web selection, DSCT)
SiemensのCTでは、Web selectionと呼ばれる新しいコンセプトと、DSCTの展示についてご紹介します。 (注意:AmiVoice MedMail Ver.6.51a を利用して執筆しています。従来よりかなり性能が向上して容易に執筆ができるようになりましたが、速報なので文章表記の誤りがあるときがあります。その場合はご連絡いただけますと幸いです
Somatom Sensatoin 64列に加えて新しくでたのがこの web selection というものです。

「Web」という聞き慣れた言葉からはあまりインパクトをうけませんが、後述しますとおり、商業的には相当に重要なものではないかと思いました。

パネルを拡大して表示します。
web selection というのは、装置で撮影したデータをインターネットを介して医師のパソコン等に転送し、診断を行えるようにする一連のサービス及び技術を指しているようです。

システム図を見るとわかりになると思いますが、 CT から吐き出されたデータが、Webspace 用の PACS や、ワークステーションに送られます。

このデータは病院内の通常の PACS 端末から閲覧できるわけですが、その他、オフィスや自宅パソコンからも閲覧することができます。

左下の図は、病院内の休憩室、また下の図は自宅にいる時の様子が示されており、重要な検査について医師が照会できる状況を示しています。

回線は、セキュアな(インターネットで「安全」の意味で頻用されることば)伝送ができるように工夫されており、最大の契約端末数は20台ということでした。

通常のパソコンで表示されている画面ですが、病院で使っているSyngoと同様の操作性を有するという説明です。
Webspace のメリットが示されています。

臨床的なメリットとしては、いつでもインターネットを介して CT データにアクセスできること、3次元画像等の構築は病院中央システムにあるワークステーションが行い、その結果の画像だけを転送してもらえるので、通常のパソコンで十分機能すること、またティーチングやトレーニングにも適すること、或いはいつでも専門医に紹介することができること等が挙げられています。

経済的なメリットとしては、自分の PC を(あたかも)三次元ワークステーションのように使用することができること、最大20台までの契約ができること e-Tune とよばれる自動 version up システムを採用していることにより、パソコン端末においても常に最新のソフトウェアを使用できること、等が挙げられています。
e-Tune というのは、装置における Evolve プログラム等の使用だもので、ソフトウェアのアップデートを自動的に確認しダウンロードしてくれるというものです。

うしてこのようなコンセプトが商業的に重要なのでしょうか。例えば私がシーメンスCTを使用していて、次の CT は別の会社のものを採用したいと思ったとします。しかしながら、どこにおいても CT のデータにアクセスできる環境に慣れていれば、そのメリットは計り知れません。従って、他の会社に乗り換えたいと思ったとしてもこのWebpackageシステムが付帯していなければ、会社を乗り換えるのためらうことになります。

 このように本体装置以外の部分で顧客の囲い込みができる仕掛けというのは(本来ユーザとしては困るのですが)、技術的に成熟してきた商品によくみられるものです。以前第一製薬がシリンジタイプの造影剤を発売した時に、造影剤自体の性能での競争よりも、パッケージングがずっと重要な意味を持つことをユーザーも強く意識したと思います。今回の発表は、そういった事柄と似ているので頭にいれておく必要があるわけです。なおインターネット回線を利用したこのようなサービスはサードパーティーの会社からも提供されると思います。ユーザーとしてはモダリティメーカー純正のものを使うのがメリットがあるのか、それとも別の解決法も考慮するのかといった勉強も必要になりそうです。また日本ではとくにデータを病院外に持ち出すことにかなり神経質ですから、大学病院などでこのシステムが採用されるかどうかも興味深いところですね。

次に昨年衝撃の発表を飾った二つの管球をもつDSCTです。

2管球による高速スキャンの効果は約束されていますが、やはり私の気になるのは、dual energyのほうです。

その dual energy に関して、 FDA で六つの異なるアプリケーションが認可されたと書いてあります。
この DSCT は昨年の販売以来、100施設以上に導入され今年末までの導入予定は150施設に残るそうです。多くは赤色の施設(循環器のための利用)ですが、黄色で示されている施設(救命救急医療の施設)においても多数導入されているということでした。

存知の通り日本では、一つの部屋の中で二つの管球を同時に作動させてはならないという法律があるために現在 DSCT としての運用が止まってしまっています。一度行政が許可したにもかかわらずやはりだめだということになっているという迷走状態です。この法律は、同じ部屋で二つの異なるX線装置を同時に作動させることによって患者に誤った被曝を生じないようにすためのものでしょう。つまり、一つの部屋に2つのX線装置を設置して野放図に同時に使うというような、現在では信じられないレベルの許されない行為を禁止するためのもので、いわば予防注射の針を変えずに回し打ちをしてはいけないという法律と同じようなものと言えます。

一方 DSCT は、21世紀に実用化された重要な技術であり、一つのCT内部で2管球を同時に動作させるというコンセプトを有し、それによる様々なメリットを想定して作られています。被曝量も考慮に入れた設計がもとからなされており、総合的に安全だと評価されたために世界で認可され、かつ日本でも一度認可されたわけです。ですからこの装置が、昔作られた別の目的の法律に抵触するという判断は、どう考えても誤っています。なぜ「抵触しない」という判断にならずに無理矢理適用しようとするのでしょうか。これにより日本の患者だけがそのメリットを享受できないでいるのですが、こんなことに正義があるのでしょうか。はなはだ疑問です。

DSCT展示の説明を続けます。

上と左の3枚は、βブロッカーを注射する場合としない場合で、どの程度検査終了までの時間が違うかを示した写真(もともとは動画)です。徐脈にする目的でβブロッカーを注射し1時間程待って撮影が行われる上に、撮影の際には循環器内科医も安全のために患者を観察する必要があり、スキャンの準備も大変になります。 DSCT を使用することによりβブロッカーを使用しないですめば、全体が速く進むという説明です。

心拍数の変動( ECG が下に表示されている)があっても artifact なく撮影できるという説明図です。
以下は dual energy の色々なアプリケーションを示します。まずこれは、基本となる骨通りです。フィリップス CT のところで説明しましたので、その原理についてはそちらをご覧ください。
ここでは「 virtual unenhanced dual energy liver image 」とかかれています。つまり、造影 CT だけ dual energy で撮影すれば、あとからヨード造影剤のみを検出して、これを引き算することができますので、引き算後の画像は「単純 CT 」ということになるわけです。このようなアプリケーションも、 dual energy の原理からすぐに予想されるわけですが、名称が面白いと思いました。
これは肺梗塞において、造影 CT のデータの上に、ヨード造影剤のデータだけをカラーマップにして fusion させた画像です。肺梗塞において、血管の塞栓を造影 CT で検出するだけでなく、肺野の perfusion defect について重ねて表示することにより、血流遮断の状況をわかりやすく表示できるというアプリケーションです。主幹部は普通の造影CTでも塞栓子がよく分かりますが、抹消はわかりにくいので、よいアプリですね。
軟部組織の識別能も上昇するので軟骨や腱組織の表示にすぐれています。
同様です。
最後のスライドは、説明してくれた伊藤さん(去年の写真を参照して下さいね)が強調していた、長いことずっと改良を続けてきた歴史を示した説明図です。

新しいところだけを示しますと、2005年にDSCTと、最初のCTベンダー純正CAD、2006年に最初のWeb enabled CTとDrual energy scanと書かれています。それぞれとても意義があることだと思います。