KSMRMが「国際化」をすることの意味

KSR(韓国放射線学会)は、5−6年前から完全英語化の準備を進め、数年前に英語が過半数となり、
昨年から100%英語の学会になったと聞いています。KSMRMも今回このようになったことは、驚きです。
仁川空港が「アジアのハブ空港」となり、日本人にとってもポピュラーになりましたが、このような
戦略性は尊敬に値します。と同時に、一人の日本人としては、日本の今後のありようがとても心配です。

日本ではとても無理・・・

英語での学会、というと、「とても無理」という言葉が返ってきます。
実際に「日本人同士が英語で議論をしている。誰も外人はいないのに」ということを考えるとそれは
もっともなことです。滑稽ですね。「自分の病院には外人来ないから、勉強しても使う機会がない」
というのも然り。逆に、「英語が普遍的になると、優位性がなくなるから困る。苦手意識を持っていて
くれたほうが我々にはラッキー」という別の人の本音も聞いたことがあります。

(実はこの潜在構造 ー多くの人は苦手だからしたいと思わない、エリートは優位性を保ちたいから
 本当は導入して欲しくない― という、完全バランスの図式は、深刻な状態なんです)

「英語化」ではなく「国際化」での遅れ

しかし、「英語化」という意味ではなくて、「国際化」という意味での遅れをとっているという、
本当の意味合いを考えると、こりゃ本当にまずいぞと思うわけです。

「英語化? そんなことはナンセンスだ」というところで思考停止してしまうと、その先にあるものが
想像すらできない状態で終わってしまいます。たとえば先ほどの「滑稽」な例に関しても、100%英語化
すると外国人がたくさん来ることが出来、彼らが英語で質問できるようになるので、「滑稽ではなくなる」
という質的変化が起こるわけですが、これは私も、KSMRMのニュースを聞いてはじめて想像ができる
ようになりました。

こんな風ですから、今後10年で、もうどうしようもないぐらいの差がつくことも予想されます。サムスン、
ヒュンダイの発展をみればそのことはわかりますよね。 政府の英語教育がダメだから・・・と批判して、
自分たちが何もしないのなら、もっとひどいことになる。

日本で国際学会を行うときもありますが、それは国内学会と別立てで、大変な努力を使ってなされます。
ワンオフだから、努力のほとんどは継承されません。主催者はがんばって偉かったけれど、次の企画が
いつになるかは分からず、風化していきます。

この二重化の効率の悪さ、ということに気づいても良い時期かもしれません。バブルの時代はもうとっくに
終わっています。100%英語、ということなら、外国人は参加するのに抵抗がなくなります。現状では、
日本の学会に招かれた外人は、自分の発表が終わったら観光して終わりです。それが「おもてなし」では
あるわけなのですが、「ありがとうね」だけで終わりで、学会がすごいなぁなどとは思ってもらえません。
どんどん国力が落ちる今、リソースをひとつにまとめて使う方に舵を切るという視点もよいアイデアだと
思います。

もしあなたが米国人だったら・・

みなさんのなかで国際学会にどんどん発表している人、いますね。皆さんにもぜひ考えていただきたいの
ですが、それってどうして「海外」に出かけなくてはならないでしょうか。もし米国人や欧州人だったら、
自国(EU含)での開催だから、気軽です。彼らの学会は、二重化されてはいません。それぞれ一つであって、
みんなが周りから来て当たり前、来るならどうぞどうぞ、という学会です。視点を変えると、実は毎年毎年、
無限に、相当損をしていることに気づきます。学会参加に少なくとも往復2日間無駄にしている。時差ボケで
寝ちゃうことが多い。ものすごく長い飛行時間だけどエコノミープラスだからラッキーと感じる・・・。
「選ばれて行く」優越感と引き換えに、合計ではかなりムリとムダをしていますよね。

実現の道のりは遠い?

(実はこの潜在構造 ー多くの人は苦手だからしたいと思わない、エリートは優位性を保ちたいから
 本当は導入して欲しくない― という、完全バランスの図式は、深刻な状態なんです)

・・・と書きましたが、この構造を思い切ってなくすには、どこから手をつけたらいいのでしょうか。

1) 英語教育について、みんなが参加できるようなプログラムを作る。
2) 英語教育の結果を、専門医や技師の資格認定に使う(最初はごく簡単にー例えば「英検」「TOEIC」
 の「受験だけを」義務付けるなど・・やさしい配慮が必要)。
3) 英語で発表する人にインセンティブを与える(参加費無料など)
4) 徐々に英語の枠を増やす(KSRではわずか3年ぐらいで完成)。
5) 明確な目標を立て、学会を「英語化」するのではなくて、アジアなどの他国から外人が多数参加できる
 ための「国際化」を目指す。

3) 〜5)のことは、韓国で実際に行われました。5)に関連して今回のscholarshipがあるわけだと思います。
日本で目指すとしたら、まず1)2) を最低3年続ける、といったことからではないでしょうか。現時点で、
すでに3年は遅れていることになります。でも、やろうと思えば1)2)はすぐでもできますよね。まず始めて
その間に次のこと考えればいいんですし。

なぜ韓国はできるのか

以上述べたように、日本人としては「すこし」素直に喜べないところもあるけれど、なるべくたくさんの人が
KSMRMのスカラーシップも利用させていただき
参加して、「どうして韓国にはそれができるのか」という
ことを学ぶ
ことも必要だと思います。

その意味もありましてこのホームページに書いてみました。