| PET(ポジトロン放出断層撮影)と比較してどのような利点がありますか?
この質問に答える前に、そもそも今回発表したMRIによる方法とPETがどの程度がんの検出能に差があるかをよく検討する必要があることを述べておきます。この検出能に大きな差があって、もしMRIがかなり劣るようであれば、本法の有用性は低いものです。私どもが今までに得られたMRIとPETとの比較においては相当よい成績を上げていますが(未公開データ)、これについては今後学会などで詳細な検討が必要になります。ここではそれ以外のことについて説明します。
・保険点数が約1/6と低い。
PETはサイクロトロンという装置を用いてまず放射性同位元素を取り出します。これをブドウ糖で標識したものを患者さんに注射します。1時間ほど待って撮影を行います。撮影時間は30分ほどです。
このため用意する装置としては一般にサイクロトロンとスキャナーを合わせて持つ必要がありますので、システムの値段がかなり高価になります。これに対応して保険点数も高くなっています。現在MRIの保険点数は概ね1200点弱であるのに対し、PETは7500点(注:1点は10円)です。健康診断などの自由診療においてはこの限りではありませんが、システムのイニシャルコストが高いぶんだけ、値段は高くする必要があることになります。
・造影(注射)を前提としない。
PETは検査に先立って注射をする必要があります。この注射は極めて安全なもので副作用の危険は一般にありません。しかし今回考案した「MR-PETgraphy」(注:その後「DWIBS法によるDWI」と呼称を変更)では注射を前提としません。つまり、異常が見つかったら造影剤の注射をして細かく調べることはできますが、本法自体は注射の必要がありません。このためPETでは必要な事前の待ち時間(注射した薬剤が体に分布するのを待つ1時間)が不要です。
・被曝が全くない。
被曝に関しては、PETそのものでは我々が1年間に受ける自然放射線と同程度のものですから、心配することはありません。しかし最近では、PETと同時にCTを行うことが重要であると考えられており、これを合わせて行うことによりもう少し多くの被曝をします。こういった被曝は一般に受診者にとって利益になること(癌を発見できる)と、不利益になること(発癌を誘発する)のバランスによってなされるべきですが、一般に前者の恩恵が遙かに大きいと考えられています。またわずかな量の被曝によって本当に発癌のリスクが高くなるのか(あるいはひょっとして逆に低くなるのか)についてははっきり分かっていません。このため現時点でPET自体やPETとCTの組み合わせ検査(PET-CT)の被曝を問題にすることはナンセンスであると考えられています。(ただしCTによる被曝量は全体として増加する傾向にあることが最近わかった(PDF)ので、無用な被曝を極力避けるようなシステム作りや啓蒙活動がいま考えられています。)
前置きが長くなりましたが、MRIでは放射線をもともと使用しないので、上記のような議論が発生することはなく、被曝が完全にゼロであるという潜在的な利点があると言えます。
・空間分解能が高い。
PETの空間分解能は一般に5x5x5mm程度を下限としていますが、今回の方法では概ね2x3x4 〜 2x3x5mm程度です。体積としてはかなり違うことになります。実際の画像でもDWIはかなり鮮明です。
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